「ウクライナ情勢」 2014.04
―ロシアの対ウクライナ戦略―
三井光夫
8区隊 通信科
本報告は、「ウクライナ情勢」のシリーズの一部をなすものである。 プーチン・ロシアにとってウクライナは兄弟国という認識である。 それゆえその認識からは、政治面からはもとより安全保障の面からもウクライナは完全な他国ではあり得ないし、あってはならないのである。 しかし、ウクライナの人々は必ずしもそう考えていない。 ウクライナの内情はロシアをマザーランドと考えている人々もいれば、ロシアに反発を感じている人々もいる。 そして相互不信感のなかで、後者の人々が多いということが、プーチン・ロシアの対ウクライナ戦略(同国をロシアに留め置く方策)を複雑化させている。 本年の初め、プーチン・ロシアは、連合協定の締結によってあわやEU入りかと思われたウクライナを、多大な経済支援でロシアが主導するユーラシア経済同盟に向かわせることに成功した。 まさにプーチン・ロシアは“ウクライナをロシアに取りこむ”という対ウクライナ戦略の最大の目標を達成する寸前となっていた。 ところが2月、予期せぬ親西欧派勢力のクーデターが起こり、ロシアへ大きく舵を切ろうとしていたヤヌコヴィチ政権はあえなく崩壊した。 それとともにプーチン・ロシアの対ウクライナ戦略の最大の目標達成もまた砂上の楼閣として消え去ったのである。 この情勢を受けて、プーチン・ロシアは対ウクライナ戦略の見直しを迫られたことは想像に難くない。 本稿は、あくまで推測の域を出ないものの、プーチン・ロシアが情勢の急変を受けて兄弟国と考えるウクライナをどのようにしようとしているのか(対ウクライナ戦略)について若干の考察をしたものである。 これに資するべく、次の事項を検討した。 第一にウクライナで起きた政変後のウクライナ情勢 第二に大国の関与(4者協議) 第三同国におけるウクライナ住民とロシア系住民の相互感情、及び彼等の対ロシア・対欧米感情の実態 第四にロシアの行動に制約をかける諸要素 第五に予想されるロシアの対ウクライナ戦略 第六に対ウクライナ戦略に変化をもたらす可能性のある諸要素 「ウクライナ情勢」―ロシアの対ウクライナ戦略―(PDF)へリンク
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