佐々木 勝人君
１区隊
靖國神社の境内に菊花の薫る10月18日、三日間にわたる例大祭の當日際に、初めて昇殿参拝させていただいた。この日は、伊豆大島に甚大な被害をもたらした台風26号が通り過ぎ、東京は晴天に恵まれての例大祭となった。
９時15分、参集殿に到着し、受付を済ませて控えの間に入る。しばらくする間に用意されていた椅子が埋まるほどの昇殿参拝者が集まってきた。さすがに子供はいないが、老若男女の500人くらいだろうか。
９時半過ぎ、案内に従って拝殿に向かう。続いて、特別参列者が案内されて所定の座に就いた。50人以上の国会議員の参拝は、式典に先立って行われたそうだ。
後に聞いたことだが、この日、安倍総理大臣の参拝はかなわなかったが、真榊を奉納された。また、村田憲久厚労大臣、伊吹文明衆議院議長、山崎正昭参議院議長も、真榊を奉納された。衆参両院議長の奉納は、近年珍しいとのこと。
さらに、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会は、式典の始まる前に223名(代理を含む)が昇殿参拝されている。
10時、大太鼓が鳴らされるうちに、德川宮司以下の神職が拝殿から本殿の座に進む。参拝者一同起立し、吹奏楽の伴奏により国歌「君が代」を２度斉唱した。例大祭式次第の祝詞の奏上と、勅使による御祭文の奏上があった。しかしながら祝詞は難しい表現で、勉強不足の私には理解が難しかった。また御祭文は、マイクを使わないため、その大意を察しうるにとどまったことは、残念だった。
「宮司以下本殿所定ノ座二就ク」から、最後の「一般遺族崇敬者昇殿参拝」まで、この間に國學院大學合唱団による「鎮魂頌」と「靖國神社の歌」２曲の合唱があったが、これを含めても一時間に満たない実に簡素で荘厳な祭式と感じた。
最後に、德川宮司が挨拶に立たれ、祭式が厳粛に行われたことに対して参拝者一同に御礼を述べられるとともに、英霊の慰霊に関する靖國神社の今後の在り方、更に韓国の歴史問題に絡む暴徒に対する警備強化の必要性について述べられた。
この後、特別参列者に続いて一般遺族崇敬者が本殿に進んで内陣に拝礼(これがいわゆる昇殿参拝にあたる)して退出、その途中の廊下で御神酒を頂戴した。
内陣に拝礼して感じたことは、「実に質素」の一言に尽きた。国のために戦没した人々を祈念すべき施設ならば、多くの国では「金ぴか」の像や防腐処理された遺体や、遺骨や武器の一部がに飾り立てるのではなかろうか。しかしそこには、祭器はあったが、一切の偶像はなかった。
質素な施設での簡素な祭式で、誠に日本の特徴が表れていると感じ入るとともに、このような祭式に神性(神聖と評すべきかもしれない)を感ずる日本国民を不思議に思い、不気味さを感じ、果ては恐怖心を抱く外国人もいるかもしれないと思った次第である。
祭式が終了した後、遊就館に向かい、開催中の「大東亜戦争70年展」を参観した。本展は大東亜戦争だけでなく、オランダ・清国以外の外国船が我が国近海に出没し始めた1830年代から、昭和20年までの日本の近現代史の展開に沿い、各時代の陸海軍の軍服と装具、英霊御生前の写真とご遺書、更に陸軍の97式戦車・野戦砲に艦載砲、彗星・零銭・櫻花等の航空機、泰緬鉄道に用いられた蒸気機関車の実物を展示していた。
仄聞するところによれば、大学入試問題に出題されないとの理由で、高校における歴史教科書は近現代史をほとんど教えてないという。これでは近隣諸国が叫ぶ歴史批判に反論できないのもむべなるかなである。そうした点から若い人が、本展を見学・参観することは欠落した日本人の魂を呼び起こすきっかけとなるはずで、平成生まれの多くの参観者が訪れることを期待したい。
もう一点は、外国ではこれらの展示品は軍事博物館に収蔵展示されており、靖國神社遊就館は「国立軍事初物館」の代替え施設になっているということである。
参拝と参観を終えて九段下駅までの道すがら考えたことは、総理大臣が靖國神社に参拝することに目くじらを立てて非難する国があるのは、なぜだろうという疑問だった。また、それに同調する輩が日本人・弁護士・国会議員に居るということである。実情を知らない無知であるはずがないし、何らかの思惑があってのことだろう。
短い時間ではあったが、厳粛な祈りと感謝と崇敬に浸った身にとって、そうした理由を詮索・推測することは辛いものである。誰もが「英霊に敬意を」表す確たる理由を探す必要はないのではないか？ 人間として自然の行為を黙って繰り返すことが、唯一の答えではないかと思う。そこで詩作をち切って現実の世界に戻って地下鉄に乗った。
最後に私事を述べると、知りうる限りにおいて、我が家系には靖國神社に祀られている者はいないので、これまで初詣や折に触れての参拝は何度も行ってきたが、昇殿参拝をしたことはなく、今回、同期の偕行会員の勧めで体験させてもらった。
誠に貴重かつ有意義な参拝と思った。謡曲を始めたが、それにも通ずると感じた。もう一つ、実は当日朝の起床時に微熱があり、体温を測ったら38度を超えていた。これ以上の悪化を懸念する家人をよそに参拝に及んだわけだが、祭式が終了する頃にハッと気が付いたことは、平熱に戻っていたことで、誠に「英霊ノ御加護アリ」を感じたことである。
（偕行社 喜田君から）
会員コーナーへ |
トップページへ |