所管する行政の「園長会議」の席で、公園を管轄(公園課)する担当者から、「保育園児の公園での遊びについて住民からの苦情が多くなってきています」と申し訳なさそうにお話をされます。
「遊ばさないで欲しい」とは言いません。「苦情があるのでそれを頭に入れて遊ばして欲しい」ということだと解釈しています。
1人でも待機児童を減らそうと保育所整備に奮闘している「保育課」と同じ建物にいます。
新規に保育所を整備するにあたっても、地元から歓迎されるよりむしろ「迷惑」がられます。
迷惑がられる理由の最たるものは「子どもの声」がうるさいです。

先日、土曜日の午後、保育園の懇談会が終わった後、数組の親子が一緒に近くの公園で遊んでいたら、制服を着た「警察官」がいつの間にか後ろに来ていて、その親に対して名前等を尋ねたそうです。
何でこんなことで警察官が出てこなければいけないのか・・・・・・「住民から通報」があったそうです。
また、同じく近くにある公園では引率者(保育士)が、付近のマンションの住民から「夜勤帰りで眠りたいが、子どもの声がうるさいので眠れない」と苦情を受け、ションボリして戻ってきました。
それ以来、午前中はその公園では遊ばさないようにしています。
子どもが走ったりすると「埃」がたつので走らさないで欲しいといった苦情もあり、水をまいてから使用したこともあります。
マンションの間の通路を列を作って歩いていても頭上から「うるさい」と怒鳴られたこともありました。
都心にある自前の園庭を持たない保育園は似たような環境下で保育をしているものと思います。
保育園の周辺には、本当にきれいに整備された公園が大小多数点在していますが、苦情を気にしないで遊ばせることができる公園は少ないと思っています。

人間の人格形成に最も重要な時期である乳幼児期に何が必要かと問われれば、「遊び」が一番必要だと答えます。
遊びを通して子どもたちは成長していきます。
ところが、そんな子どもたちの遊びに「ストップ」を掛けているのが、実は我々と同世代の高齢者に属する人たちではないかと思っています。
今の世は、「匿名」に名を借りて、行政にクレームを入れます。
行政はすぐに反応し現場に下してきます。

つい最近ですが、その匿名者と思われる方から直接園長に電話が入りました。
40分間の長電話になりました。
クレームの内容は、「園長は、保育園児が遊ぶ時間は30分程度といいますが、私にとっては、次から次へと新手の子どもたちが来て遊ぶので一日中騒音に悩まされている。」です。
この言い分も理解できます。子どもの声が騒音に聞こえる人は、声の大小に関係なく「いやだ」なのです。
逆提案をしました。 「どんな公園ならいいですか」。
すると「小さい公園をいくつも作るのではなく、子どもたちの声も気にしないですむ地下式公園を作ったら良いでしょう。園長の方から行政に提案して下さい。その時は私も応援しますから」と。
「あなたの提案を行政にも伝えますから」と話している間にクレームのトーンも柔らかくなってきて、解決したわけではありませんが、穏やかに別れることが出来ました。
このやりとりの内容は、行政にもすぐに伝えましたが、「地下式公園は無理です」との回答を得ました。

「少子化対策」、「子育て支援」と叫ばれてから国はいろいろと対策を打っていますが、一向にその効果は出ていないように思います。
東京オリンピックが開催される2020年には、全都道府県の高齢化率が30%を超えるそうです。
子どもが増えなければ、まさに「日本沈没」です。
政治家の皆さんは「待機児童0」のために保育所をどのくらい整備しますとよく言われますが、確かにそれも必要です。
が、その前に是非やって欲しいことは、国民全体・社会全体が「子どもは国の宝」という意識を取り戻すような施策を打つことです。

苦情を言われる高齢者にもさまざまな事情があることは百も承知です。 
理解もできます。
しかし、そんな人たちも一度は「子ども」であった時代がありました。
その時は、苦情など気にせず、思い切り遊べたのではないでしょうか。
どうか「がまん」をお願いします。 それしか言いようがありません。

探しました…見つけました。
ドイツ・ベルリンでは、2010年に子どもの騒音に関する法律を改正して、「子どもの声は騒音ではない」と、法律に規定しました。
「子どもの声」は、自動車・飛行機・その他の騒音とは切り離して「騒音ではない」と規定しました。
日本でもできないはずはないと思います。
「落選」を覚悟してでもドイツのような法律を作てやろうという勇気ある政治家が出ることを願っています。

原稿を書いている間にも、またしても公園で子どもを遊ばしている保育士が、制服警官から職務質問を受け、「氏名」だけでなく「生年月日」まで問われました。
職員は素直ですから言われるままに答えてしまいましたが、まるで犯罪者扱いです。
警察官の「やりすぎ」です。
本日の職員会議で、誠に変な話ですが「警察官対応マニュアル」について園長の考えを説明するとともに、そのような事態になった時は「園長を必ず現場に呼ぶよう」に指示しました。

4月1日、赤ちゃんを含む新入園児(約40名)迎え入れ、総勢170名の園児で新年度がスタートしました。
慣らし保育期間後半になると泣き声も少なくなり、ようやく落ち着いてきた感がありますが、毎日緊張した日々が続いています。
   (つづく)

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園長先生のお話(その3)


   「子どもの声は騒音ではあらず」

3区隊  機械8班  ラグビー部
村松 洋一