そろそろ「園長職」を退くことを考えていますが、今回は保育園における「報道の自由」と「個人情報の保護・管理」について最適なテーマ―が飛び込んできましたので紹介したいと思います。 NHKクローズアップ現代のデイレクターが、突然「取材申請書」を持参して保育園を訪ねて来て(何故突然訪ねて来たかという理由は法人内の問題でありここでは触れません)、子どもたちを取材したいと言う申し出がありました。 〈取材申請書〉 番組名 クローズアップ現代「保育園は迷惑施設か(仮)」(全国放送) 放送日時 2014年10月下旬*予定「NHK総合テレビ19:30〜19:56 全国放送 番組概要 いま全国の自治体で、保育所に対する苦情が相次いでいる。 その多くが「騒音」で、9月には神戸市内の保育所が訴えられるケースも起きている。 番組では、近年、議論を巻き起こしている「子どもの声は騒音か否か」について、その実態について取材。 ”不寛容”とも言われる現代社会において「子どもと社会がどうあるべきか」・・・様々な取り組みや事例を紹介しながら、考察する。 申請概要 貴園の「保育園」について、取材させて頂きたく、お願い申し上げます。 私自身は、保育園建設に全く関与していませんが、 保育園は3年半前の震災の年に世田谷区太子堂に誕生しました。 建設にあたって当初地元の反対にあって苦労してきたと聞いていますが、その後地元との関係で保育園がどのように受け入れられてきたかを検証しながら紹介するようであります。 2年前から当園の園長をやっておりますが、 「子どもの声は騒音ではあらず」と現場を預かる園長として強く思ってきたところであり(園長先生のお話(その3))、番組の趣旨には大いに賛成です。 しかし、明日から取材をしたいという申し出(NHKには責任はありません)に対しては、お断りしました。 まず何故明日からの取材を断ったかということです。 当園では設立の時から保護者から子どもたちの写真撮影に対し、保護者の承諾を得てからやって欲しいという要望があり、そのことを遵守しています。 まして全国放送のテレビ取材であれば保護者に対する説明・同意を得てからやらなければならないと考えています。 行政の監査等においても、マスマデイア、ネットの怖さが指摘され、「個人情報の保護」について指導が入ってきます。 本件について、全保護者に対し状況を説明し理解と協力をお願いしましたが、 承諾まで確認する時間的余裕はありませんでした。 数名の保護者からは心配・反対の意見がありました。 取材にはお子さんが映らないように配慮することを説明し理解をお願いしました。 放送によって保育園がクローズアップされ、逆に子どもたちが何かをされるのではないかと心配され、放送そのものを中止して欲しいとも言われました。その気持ちも非常に理解できます。 一方、NHKの担当者が、裏付けをとるため 保育園周辺の住民の方々を念入りに取材している姿を見ています。 担当者からは、本園が住民の反対が強い中で建設のための住民説明会に保育士まで参加して理解を求めていた事実を聞きました。 さらに、現在本園は、地元から温かく迎えられている園であるということも聞かされました。 放送に当たっては、 園長がナレーションなどチェックをし、問題があれば修正すること、今回の取材は、現状を打破するため社会に「希望の種」を蒔くチャンスであること、映像には少なくとも反対された保護者のお子さんは映っていないこと、そして放送の責任は園長が負うということで説明していますが、反対している保護者との『ギクシャク』した関係は修復できませんでした。 NHKには、放送は「可」ということで伝えています。 そもそも何故子どもの声が騒音として取り上げられているのか、 10月10日の産経新聞朝刊の記事を紹介します。 東京都の『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例』において、「何人も規制基準を超す騒音を発生させてはならない」と定められています。 国の騒音規制法や他の道府県の条例は、対象を工場や建設現場などに限っていますが、「何人も」と規定しているため子供も例外ではなくなっています。 この条例を根拠に苦情が発生していることも事実であり、東京都も条例の見直しを始めた様です。 今回の取材・放送によって子供たちが安心・安全に保育園に通うことが出来、そして思い切り遊べるようなそんな社会になってくれればと願っています。 放送予定は10月29日(水) NHK総合テレビ「クローズアップ現代」19:30〜19:56 撮影項目 @ 地域で生きる子どもたちの様子:地元町内会のお祭り A 子どもたちの様子:お散歩・屋外遊び B 保育園建設に携わった「園長インタビュー」 (つづく)
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園長先生のお話(その5)
「子どもの声は騒音ではあらず(パート2)」