隊友ふれあいウォ−キング
玉川上水と雑木林に名作・武蔵野を偲ぶ

 隊友ふれあいウォーキング「玉川上水と雑木林に名作・武蔵野を偲ぶ」は、5月後半に実施しました。 

 中央本線「武蔵境駅」に集合、その昔、国木田独歩がよく散歩した独歩通りを桜橋に向かいました。
途中、通りを外れ、高橋家の樹齢300年を超えるケヤキ古木を見学の後、玉川上水緑道に出て、品川上水取水口跡を見学しました。 
品川用水は、旱魃に悩まされていた品川領内の九つの宿や村の農業用水として、寛文9年(1669)に開通しましたが、その距離は境の取水口から大井の用水掛渡井(品川区西大井6−1)迄、約25.5qで、この用水により水田開発が進み、収穫量も増え、戸越村のように倍増した村も有りました。

       

 玉川上水緑道は、昭和48年東京都が作成した「玉川上水みどり計画」を基に整備されて来た玉川上水両側の遊歩道で、現在三鷹市「牟礼橋」から昭島市「こはけ橋」までの13.7kmです。

 桜橋の袂に「国木田独歩文学碑」が在りますが、独歩は明治4年千葉県銚子市に生まれ、19歳で基督教の洗礼を受けています。
東京専門学校英語政治科を中退、23歳の時、自由新聞記者、24歳で国民新聞社に入社、29年4月佐々城信子との結婚に破れた後、詩と文学を志し、英国の自然詩人ワーズワースやソビエトのツルゲーネフに傾倒し、自然と人生を対比させた作品で新文学を打ち立てました。殊に、武蔵野の落葉林の美に目をとめた最初の文学者と言われています。
 「国木田独歩文学碑」は、この近くに住んでいた社会事業家で、「武蔵野新聞」を発行していた故望月清次さんが、丹羽文雄の紹介状を持って、作家の野田宇太郎(昭和59年没)を訪ね文学碑を建てることを要請、独歩50年忌を機に望月、野田氏等が世話人となり、独歩縁の地である桜橋の袂に、野田宇太郎の揮毫で「武蔵野」第6章冒頭の一節が刻まれた碑が建てられました。 

       

 境橋の袂に玉川上水碑が有りますが、玉川上水は、江戸に飲料水を供給する為に武蔵野台地を掘削して、多摩川の水を羽村で取水し、内藤新宿の四谷木戸へ流した約50kmの水路で、江戸初期承応2年完成しました。碑は、300年余に亘る歴史的役割を終えた上水を記念して、昭和56年に建てられました。

       

 又、道路を隔てた北側に、千川上水清流復活の碑が建てられています。
千川上水は、5代将軍「綱吉」の時、小石川白山御殿、湯島聖堂、上野寛永寺、浅草寺等将軍家御成御殿に清水を引くことを主目的に江戸市街北部に上水を送るため、元禄9年(1696)に開削。工事を命じられたのは、仙川村の太兵衛・徳兵衛で、二人は保谷村先から巣鴨に至る五里(約20km)二十四町に亘る工事を始めましたが、予定の工費が不足したため、私費を投じて完成させました。
その功により仙の字を改め千として、千川の姓を与えられました。

       

 又、天水に頼っていた沿岸二十カ村も灌漑に利用することを願い出て許され、千川上水は用水としても広く利用されました。
正徳4年(1714)白山御殿が閉鎖され、千川上水は不要となり、幕府は上水を廃止し市中への引水を停止し、その後は専ら田畑用水として使われ、明治になって工場進出とともに工業用水になり変って行きました。
それに伴い河川が汚れ、その後長い間放置されていましたが、地域の人々の働きかけにより、平成元年3月に清流が復活しました。

       

 小金井公園入口の上水を隔てた向かい側を少し入った処に浴恩館公園が有りますが、浴恩館は昭和5年京都から移築して、青年団講習所として使用された建物で、自伝小説「次郎物語」の作者、下村湖人が青年団講習所の所長を務めたのは、昭和8年から4年程で小説に登場する「友愛塾」は、ここがモデルとなっています。
湖人が講習生と寝食を共にし「次郎物語」を執筆した空林荘は、不審火により焼失し、今は建物の前に湖人の歌碑「大いなる道といふもの世にありと思う心は未だ消えず」のみが残っています。

       

 小金井公園内の江戸東京建物園には、現地保存が不可能な文化的価値の高い歴史的建造物が移築・復元され、現在30棟余が公開されています。
公園内は、西、センター、東の3ゾーンに分かれ、西ゾーンには、高橋是清の邸宅、八王子同心の家、名主の家等歴史的建物が在り、センターゾーンには、我が国の代表的な建築家が建てた家が、又東ゾーンには、昔の酒屋さん、お菓子屋さん、銭湯等が軒を連ねており、その一つ一つを訪ね歩いていると、予定して1時間が「あっ」と言う間に過ぎてしまいました。 

 小金井公園を後に、再び玉川上水緑道を遡り、名勝小金井桜碑、御成松跡、行幸松碑等を見学の後、ハナノキ並木、ナンジャモンジャ通りを通って、昼食予定地に向かいました。

       

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村越 和平
3区隊(通信)