3月11日14:46、東日本大震災が発生し未曾有の大災害を東日本にもたらし今もなお終息をみず被災者は塗炭の苦しみの中にいる。心からお見舞いを申し上げます。

 この災害に際し自衛隊は創設以来最大規模で出動し、軍隊らしく整斉と行動し真価をいかんなく発揮し国家の最後の砦として役割を果たした事はその昔同じ任にあった者として誇らしく思う。 報道によると普段辛口の中国は自衛隊の活躍を80点と評価をしたと記憶している。 ここで改めて自衛隊の成果を声高に言う事はしまい。面映ゆいので止めてくれと言うくらい謙虚で真面目で真に国を思う集団であるからである。

 さて古い話で恐縮であるが、ある陸幕長が就任訓示で「3つの戦い」を要望した。その一つに「存在の戦い」という信じ難い要望があり残念な思をしたことを今も忘れない。それほど冷たい逆風の吹く時代環境の中で黙々と訓練に励んだ先輩諸氏の努力に改めて頭が下がる思いである。自衛隊創設以来60年経過するもいまだ軍隊としての認知を受けていない。当局も現状を是としている風潮に残念な思いがするが小生の錯覚であればと願うばかりである。

 同じ境遇であったドイツでは基本法を幾度も改正し軍隊らしい軍隊を整備しNATOの枢要な地位にある。明治維新の革命を成し遂げた民族は今の日本民族ではなかったのであろうか?そんなはずはない!これでも変革しないとすれば、日本に自浄能力はないと諦めるしかないがそれでは済まない事が辛い。

 同期の100%が自衛隊を退職して10年が経過した。10年一昔いろんな感慨もあったが全てが懐かしい思いに変化している事に気づく。当時の国民の冷たい視線の中敢えて自衛隊を志願し入隊した同僚、自分でいうのも憚れるが骨のある連中であった。
 
 時が経て定年を迎えやむを得ず生活の糧を得るため新たな職域に転進し初歩から出直したが、苦労を苦労ともせず生き抜いた。そのバックボーンは恐らく冷遇された中を生き抜き、信念を貫き通した自衛官としての矜持と育まれた自衛隊魂であったろう。世の中良くしたもので激しく流動する今の世相を生き抜くに自衛隊時代培った精神が役立ってきたとは時代のなせるいたずらであろうか?

 戦前軍人として人生の大半を国家に尽くしたが、終戦を境に全ての国家の支えを失ったばかりか人間性までを否定され、激動などという言葉では言い尽くせない厳しい時代を生き抜いた父親を思えば小生の苦労など苦労と言える程でもない。その父は戦争や戦後の境遇を一切語ることもなく、愚痴る事もなくあの世に旅立ち久しい。

 今年もやがて戦後66回目の8月15日を迎える。   合掌!



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1区隊
特 科   曽宮建夫

平成23年7月31日

「 遠 く て 近 い 風 景 」