2001年9月11日(米国同時多発テロのあった日) 12時頃突然外務省の奥克彦
国連政策課長から、今日中に是非会いたいとの電話があった。四谷の
事務所で4時に会
う事になったが、あいにくその時問はどしゃ降りになり、ず
ぶぬれになりながら時間ど
うりに橋本課長補佐と一緒に来て頂いた。話の内容
は世界で紛争が終わった後紛争が拡
散するのを防止するために世界各国は元軍
人が多くの分野で活躍をしている。元自衛隊
の人に活躍してもらえる分野があ
ると思うので調査をする計画がある。ラグビー仲間で
ある杉山元統幕議長に相
談したところ、杉山元統幕議長が西元元統幕議長と相談し嶋野
が良いのではと
言う事と奥政策課長も南西アジアに勤務していた時、当時パキスタン防
衛駐在
官時代の私を知っていたのでお願いにきたとの事であった。

 国連の活動の中で
日本がやらなければならない事として紛争予防のための活動に積極
的に協力す
る事が必要だと強調していた。その中で小型武器の移転の規制や余剰兵器の
減、特に兵器の回収、処分、管理が重要でこれらの分野で元自衛隊の方が必要である
。また元兵士の武装・動員解除、杜会復帰支援、これらに加えて地雷処
理や、麻薬の取
り締まりやダイヤモンド等貴金属、文化財等の警備等の調査に
行って頂きたいとの事で
あった。

 私も会杜人間なので会杜の了解が必要である
が可能ならお役に立ちたいと言う事で了
解した。更に話しは私がパキスタン時
代アフガン・ムジャヒデーン(ゲリラ)のヒクマ
テヤールグループに捕まった
日本人を救出した話になりアフガニスタンにおけるムジャ
ヒデーンの活動状況
やパキスタンのタリバンに対する支援状況に発展した。奥政策課長
がかなり熱
心にムジヤヒデーンの事について質問していたのを記憶しているが、偶然か
うかはわからないがその5時間後に同時多発テロが起こった。アフガン戦争を経てイ

ラク戦争に進み、イラクで何者かの凶弾に倒れた事を考えるとこの運命はあの時から始
まっていたのではと思われてならない。

それから
1ヶ月後の10月21日からのシーラレオーネミッションに調査員として行って
ほしいとの
依頼が奥政策課長からあり、担当の加藤喜久子さんと調整するようにとの事
黄熱病の予防注射を射ったり、マラリアの薬を買ったり、保険の契約の調整をしたり
、派遣に当たって外務省から会社に依頼の文書の調整をしたり、何回も
奥課長のいる5
09室に足を運んだ。いつもどんなに忙しくても話に加わって
頂いた姿が忘れられない
。時には杉山元統幕議長とラグビーをやった話とか、
私がパキスタン勤務時代に勤務し
ていた時の話をすることもあった。その中で
もカンボジア、アフガンや多くの紛争国で
元軍人が色々の分野で活躍している
ので日本としては元自衛隊の人の協力が必要だと言
っていたのを今も克明に覚
えている。(この時のミッションには出発直前に私のほうの
都合でキャンセル
せざるをえずご迷惑をおかけした。)

 最近読売新聞社から国際協力賞を「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」が受賞し
たがに西元元統幕議長を会長とする自衛隊
OBが国際協力の分野で活動を行っている事
、また、中国において生物遺棄兵器の調査・処理に自衛隊
OBが尽力している事をステ
ップにして、奥大使が紛争予防活動強化・人材育成支
援制度の発展に情熱を傾けていた
事を受け継いで世界の紛争国における復興支
援に積極的に協力して奥大使にお報いした
いと思う。

 9日の葬儀に4000人を超える人が参列したが友人達の弔辞の中に「苦労は買って
でもする」とか「本当のエリートは人のために尽くすとか」、「人生
1度や2度は命を
かけてやる」とか生前奥大使が言っていた事が紹介され、更に
8月に外務大臣賞である
川口賞の授与を多くの賛同を得て決めたが任半ばであ
り辞退したとか、10月ころ任務
交代の話が出た時、イラクの仕事はこれから
であり継続したいと自ら申し出たと言う事
を伺い、こんな素晴らしい人が日本
にいたのだと改めて敬意の気持ちを持った。奥大使
がイラクでみずから身の危
険をもかえりみず困難な勤務を行っていた気持ちを察すると
私も国際貢献の分
野で少しでもお役にたちお報いしたいと思う。

 今日(12月9日)自衛隊のイラク派遣が閣議決定されたが自衛隊がサマワで立派に
復興支援をしてイラクの平和な国作りに貢献する事が奥、井ノ上両外
交官の死にお報い
するのみならず国際杜会における日本の重要な役割を果たす
事であり成功をお祈りして
いる。自衛隊の皆さんには今まで例のない危険な状
況が起こる可能性があるので万全の
態勢を敷き立派に任務を完遂し全員無事に
帰国する事を願っている。

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嶋野 隆夫

イラクで凶弾に倒れた奥大使を悼む